日本酒が好き、日本酒の魅力を広く伝えたい、という方は日本酒に関する資格を取得してみてはいかがでしょうか。
日本酒に関する資格は、主に「日本酒検定」「唎酒師(ききさけし)」「SAKE DIPLOMA(酒ディプロマ)」が挙げられます。飲食店に勤めている人や日本酒の販売に携わっている人だけでなく、趣味として日本酒を楽しんでいる方にもおすすめです。
日本酒への理解を深められるだけでなく、日本酒の楽しみ方がぐっと広がるでしょう。
日本酒検定
日本酒検定は、日本酒サービス研究会・酒匠研究会連合会(SSI)が運営する検定です。日本酒への理解を深めながら、その魅力を消費者へ広く伝えることを目的としており、年間約1,500人が受験しています。5級・4級・3級・2級・準1級・1級と6つの難易度に分かれ、日本酒の初心者から専門的に扱う上級者まで広く受検できることも特徴です。
出題内容は主に日本酒の歴史、文化、造り方、モラル・マナー、楽しみ方、雑学など。趣味で日本酒をよく飲んでいる、日本酒についてこれから知識を深めていきたい、という方は、入門編である4級・5級を受験すると良いでしょう。
日本酒検定の区分と合格者の人物像は以下の通りです。
- 4級・5級:日本酒の基礎知識、周辺知識を活用して自身が日本酒の魅力を楽しめる者
- 3級:上記に「特徴、魅力を理解し、第三者に伝える能力」が追加
- 2級:上記に「新たな楽しみ方の考案」が追加
- 1級・準1級:日本酒のあらゆることに精通し、後世へ適切に継承発展を行える者
日本酒検定を受験する方法・条件
日本酒検定は、20歳以上であれば誰でも受検できます。4級と5級はネット受検も可能で、自分の日本酒の知識を試すために挑戦する人におすすめです。3級はCBT受検と会場受検が選択でき、準2級以上はすべて会場での受検となります。5級〜1級のすべてにおいて、試験の内容にテイスティングがなく、知識だけを問う形式のため気軽に挑戦できます。
しかし、1級は準1級合格者、準1級は2級合格者、2級は3級合格者のみ受検可能という条件があるため注意が必要です。また、日本酒学講師と酒匠の認定を受けている場合は準1級から、唎酒師の資格保有者は2級から受験することができます。
唎酒師(ききさけし)
唎酒師は、日本酒検定と同じくSSIが認定する資格です。日本酒関連の資格の中では知名度が高く、「日本酒の有効なセールスプロモーションの実行力」を身に付けるための資格と定義されています。そのため、飲食店や酒類の販売店で勤務する人が多く取得する傾向です。1991年に資格が制定されて以来、4万人以上の唎酒師を輩出してきました。
唎酒師は、日本酒に合う料理の提案や料理の開発をはじめ、販売のノウハウなど幅広いスキルを高められる実践的な資格です。そのため、接客の最前線で活躍する人が目指す資格の一つとも言えます。日本酒への理解を深めるだけでなく、魅力をわかりやすく人に伝えたり、日本酒愛好家を増やしたいと考える人にも向いている資格でしょう。
唎酒師(ききさけし)の資格を取得する方法・条件
唎酒師の受検資格は20歳以上であり、さらに資格を取得するにはSSIのカリキュラムを受講する必要があります。
資格取得までの過程は以下の5つの選択肢があるほか、最終的な受検方法は「試験を受ける」「課題を提出する」のいずれかから都合に応じて選択可能です。
- 通信プログラム
- eラーニングプログラム
- 2日間集中プログラム
- 1日通学コース
- オンデマンド受講コース
「通信プログラム」と「eラーニングプログラム」は、提出した課題が基準に達していればカリキュラムを最後まで受講するだけで合格となります。ただし、合格までの期間は数か月の掛かるため時間に余裕がある人におすすめです。
「2日間集中プログラム」「1日通学コース」「オンデマンド受講コース」は、受講・学習期間が短い一方、後日、一次〜四次試験を受検する必要があります。1次・2次は選択式の筆記試験、3次はテイスティング、4次試験は日本酒のセールプロモーションを考案する記述式試験です。
SAKE DIPLOMA(酒ディプロマ)
ワインのソムリエを輩出する一般社団法人日本ソムリエ協会が認定する「酒ディプロマ」。日本酒検定や唎酒師よりも難易度が高く、ソムリエに準じるような日本酒のスペシャリストの育成を目的としています。日本の食文化の一層の普及と向上を目的に、2017年に日本酒・焼酎の認定制度「SAKE DIPLOMA(酒ディプロマ)」が立ち上げられました。
ソムリエが難関資格であることから想像できるように、酒ディプロマも一朝一夕で取得できる資格ではありません。例えば、日本酒の醸造方法や主要産地の情報、料理との相性など広く深く知識を身に付ける必要があり、2次試験のテイスティングや論述試験の難易度も相当なものです。
酒ディプロマは、2018年にロンドンで「SAKE DIPLOMA INTERNATIONAL」が開催され国際資格として認められました。今後も中国、台湾、アメリカ、ドイツなど、資格試験の開催国は増えていくと考えられます。
SAKE DIPLOMA(酒ディプロマ)の資格を取得する方法・条件
酒ディプロマの受検資格は満20歳以上であることのみ。国籍や職種、経験は一切不問です。
資格を取得するには、一次試験の学力試験(従来の筆記試験)と二次試験のテイスティング・論述試験の両方に合格する必要があります。
一次試験は、試験会場のコンピュータで受験する「CBT試験」が行われます。試験内容は協会制作の教本「J.S.A. SAKE DIPLOMA」に準じており、日本酒の歴史や醸造方法、種類、テイスティングのノウハウなど幅広い分野で出題されます。
二次試験は、テイスティングと論述試験です。2020年以降は、一次試験の合格者に限り、向こう5年間で3回まで一次試験が免除されることとなりました。酒ディプロマは比較的新しい資格なので、レギュレーションはたびたび変更される可能性があります。そのため、受検前には必ず公式サイトで最新の情報をチェックしましょう。
酒匠(さかしょう)
SSIが認定する酒匠は、唎酒師の上位資格として位置づけられ、日本酒と焼酎を取り扱う資格です。
酒匠は高度なテイスティング能力が求められ、香りや味わいの視覚化や数値化を行うことで日本酒・焼酎の魅力を広く伝えることが目的とされています。飲食店の従業員や酒販店の経営者、酒類卸売業のバイヤーなどが持っていると、より信頼性が高まる資格の一つです。
酒匠(さかしょう)の資格を取得する方法・条件
酒匠の受験資格は、唎酒師と焼酎唎酒師の資格を保有している、かつFBO(料飲専門家団体連合会)認定会員であることが求められます。
酒匠になるには、SSIが開催する2日間に渡るプログラムを受講した後に1~4次試験への合格が必要です。
プログラムは2日間連続で講習会が行われ、約18時間に及びます。香りのサンプル、水溶液など、日本酒や焼酎を含めた多数のアイテムを使用し、嗅覚・味覚能力の向上を目指す基礎トレーニングをはじめ、日本酒・焼酎の特性を見極める能力を磨くために酒類の比較テイスティングなどが行われます。
試験については、1・2次は筆記、3・4次はテイスティングを伴う筆記です。
酒匠は、提供販売者向けのプロフェッショナル資格として一番上位に位置づけられているため、挑戦しがいのある資格と言えるでしょう。
日本酒学講師
日本酒学講師もSSIが認定する資格の一つで、日本酒や焼酎の「先生」となる資格です。資格取得後は全国で日本酒ナビゲーター及び焼酎ナビゲーターの認定セミナーの開催、セミナー参加者へ資格の認定などを行います。現在、600名以上の日本酒学講師が国内外問わず活躍しているとのこと。
日本酒学講師は、日本酒の魅力を広めることに加えプロの育成も行うため、酒ディプロマや唎酒師よりも活躍できる場所が広くなります。従業員の教育や自社の利益拡大にも役立てられるため、趣味というよりはビジネスとして日本酒を扱う人に向いている資格です。
日本酒学講師の資格を取得する方法・条件
日本酒学講師になるには、3日間の講習を受け試験に合格すると資格を取得できます。
ただし、受験資格として以下を満たしていることが必要です。
- 唎酒師または焼酎唎酒師であること
- FBO公認講師であること
- 以下の①②③のいずれかを満たしていること
①酒匠/日本酒学講師 講習会受講者限定「VR日本酒製造体験プログラム」への申込および参加
②以下に指定するFBO及び提携加盟団体が主催するセミナー等への参加履歴
・「学びの遠足!蔵元見学・VR日本酒製造体験」
・「蔵元体験実習」
・「造って学ぶ日本酒道場」
・「日本酒学講師とめぐる蔵元見学ツアー」
・2022年1月・2月開催「VR日本酒製造体験プログラム」
③「蔵元見学証明書」の提出
日本酒の資格は趣味にも仕事にも活かせる!
日本酒に関する資格は、趣味として知識を深めたい方はもちろん、飲食店や卸売・小売などさまざまな分野で活用できます。
興味がある方は、挑戦してみてはいかがでしょうか。